パッシブ換気の仕組みで省エネと快適性を両立した家/小樽市S邸

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1965年に小樽市で創業、地域密着工務店の当社は、顧客の要望に丁寧に応えるプランニング、高断熱高気密で暖かい住まい、自然エネルギーを活用したパッシブ換気の家づくりが特徴です。

小樽市のS邸を訪ねたのは2月の厳冬期。「共働きなので不在時は暖房を切り、在宅時も、省エネに配慮して室温19℃前後で過ごしています。室温が19℃というのは寒いと思われるかもしれませんが、慣れたので寒いとは思わないです」とSさま。電気・ガス・灯油などの光熱費が高騰を続ける中で、S邸の1カ月のガス料金は、暖房・給湯で1万9,000円という安さでした。

北海道では、1月の冷え切った外気に含まれる水蒸気の量は、夏場のおよそ2割程度しかありません。カラカラに乾いた空気を換気のために室内に取り込み、さらに暖房すると、室内の湿度は20%以下になってしまうことも...。そのため多くの住宅では加湿器や洗濯物、観葉植物などで湿度を上げる努力をしています。

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ところがS邸の温湿度計を見ると湿度は42%を指しています。実はこれはパッシブ換気のデマンドコントロールという仕組みが作用しています。

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パッシブ換気は、取り込んだ外気を地熱で暖め、床下で暖房し、暖かい空気は上昇する性質を活かして住宅内を循環させ、最後に天井の排気筒から屋外に排出する原理です。

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S邸でも2階の天井には、屋外に空気を排出する出口があり、そのほか各部屋と共有ホールの空気が循環できるように空気の出入り口が設けられています。

住宅内は、呼吸や調理で発生する二酸化炭素や臭い、家具などからの有害化学物質、そして水蒸気などが徐々に増えます。換気が不十分であれば健康、そして室内の結露、カビなどの原因にもなります。

そこで24時間換気が義務付けられているのですが、室内の空気がそれほど汚れていない時(家族が外出中や、家族の人数が家の大きさの割に少ないなど)にも一律に換気をしてしまうと、北海道の真冬では、暖房エネルギーのロスが生まれるほか、湿度が下がり過ぎてしまうというデメリットが大きくなってしまいます。

そこでパッシブ換気では、人が少なく、空気があまり汚れないタイミングで換気量を自動的に減らす「デマンドコントロール」という機能を持たせています。この結果S邸では室内の換気は確保しつつ、室内の過乾燥も防ぐことに成功しているのです。

初めての打ち合わせで、ご主人と社長が意気投合

「親戚が大工をしていたので、実家もその大工さんに建ててもらいました。困ったことがあれば、すぐに建てた本人が直してくれる関係を見ていたので、家を建てるなら地元の工務店さんにお願いしようと決めていたんです」とSさま。ネットで見つけた当社にメールをし、話だけでも聞いてみようと出向いた初めての打ち合わせで、依頼を即決していただきました。「江田社長は、飛び込み客のような私たちをていねいに迎え、家づくりや性能についてとても熱心に教えてくださいました」とSさま。若いご夫婦なのに、考えがしっかりしていらして驚きました。

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玄関からLDKへつながる廊下。白い壁の手前に戸袋に隠れた引き戸が収まっているため、開いた時には扉の存在感がなくなります。閉じれば天井まで続く壁のようになり、玄関ホールとリビングを遮ることができます。

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LDKはキッチンを中心にした造りです。奥さまの希望で、家族の帰宅がわかるよう、2階へ続く階段が見える位置にキッチンを造りました。

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キッチンの背面には、食器や炊飯器なども丸ごと収納できる収納庫とパントリー(保冷庫)があります。

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収納庫は引き戸が金属メッシュになっているため、炊飯器などから出る水蒸気が庫内に溜まることがありません。

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共働きなので、手が空いている方が料理を作って協力しあう素敵な関係です。並んで料理する際も、両サイドから出入りができるアイランドキッチンは広々使えて快適なうえ、隣に洗濯機を備えたユーティリティーとバスルームがあるので、家事動線もスムーズです。システムキッチンは、手入れしやすいホーローのキッチンパネルが魅力のタカラスタンダード製を採用しました。

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高気密高断熱の家は、冬でも室内に寒い場所がありません。外気を取り込む保冷庫は、食材を保存するマストアイテムです。

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無垢のナラ材を使った床は、自然塗料のオスモカラーを使った三分艶仕上げ。家族の安全面でも安心な仕上げ材です。

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キッチン前のフリースペースは、床にレールがない2面の吊り戸を閉めれば独立した部屋になり、来客時にも重宝します。

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ユーティリティーは、造作棚やつっぱり棒で、壁を有効活用しています。

ヒアリングシートに記入しながら、家づくりの希望を具体化

家づくりの要望は言葉で伝えたり、江田建設が用意したヒアリングシートに記入して伝えました。その要望を元に当社の社長が具体的なプランを書き起こしていきました。

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室内で唯一、壁に色を付けた主寝室。ロータイプのベッドなど、旅館をイメージしてコーディネートしました。

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2階には子ども部屋も。

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2階の乾燥室。天気を気にせず洗濯物が干せるので、不在時も安心です。ここにも、空気の通り道であるガラリがあります。

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光を取り込む吹き抜けの階段室。1階の空気を2階の排気口へ運ぶ空気の通り道にもなっています。

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新婚のふたりは、子どもができた時のことを考えながら設計を進めたそうです。すると、引っ越しの頃におめでたがわかりました。空気の綺麗な快適な住まいに、新たな家族を迎える日はもうすぐです。

カメラ 村川写真事務所
ライター 布施さおり

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