パッシブ換気について

江田建設は住宅の換気システムに、パッシブ換気システムの導入をおすすめしています。

図:パッシブ換気システム

このページでは
パッシブ換気システムに興味がある方
住宅の結露、カビに困っている方
シックハウスやアレルギー問題に関心のある方
室内空気環境に興味がある方
住宅の断熱・気密・換気・暖房に関心のある方

はもちろん
寿命が長く耐久性の高い住宅、家族の健康も守れる良い家を手に入れたい方に向けて、住宅の換気にパッシブ換気を導入するメリットをお伝えします。

なお江田建設・江田清三はNPO法人パッシブシステム研究会の副理事長も務めており、住宅の正しい換気手法を追い求める研究者・工務店と長年にわたってパッシブ換気システムの検証と実践を進めています。

室内の空気は少しずつ汚れていきます

呼吸や調理など、人間やペットが家の中で生活しているだけで、室内の空気は徐々に汚れます。二酸化炭素濃度も高まり、臭いもこもります。洗濯物を干したり、身体から蒸発する水蒸気で、室内の水蒸気量も増えます。もし住宅のクロスや家具などからVOC(揮発性有機化合物)が出ていたら、それらも室内空気中に増えていきます。

これによって住人の健康や快適性に支障が出るだけでなく、結露やカビが柱や梁、断熱材など住宅の基本性能に関わる部分にも悪影響を及ぼすリスクが生じます。

住宅の換気は、汚れた空気や水蒸気を排出し、フレッシュな屋外の空気に入れ換えることで、快適な室内空気環境を維持し、結露やカビなど住宅を劣化させる要因も解消する重要な役割を担っています。

建築基準法は、1時間あたり室内の空気が全体の半分、つまり0.5回/h以上換気される換気設備の設置を義務付けています。住宅の換気装置は、毎日、常時稼働していなければなりません。

気密性能の確保は計画換気の大前提です

なお、そもそも気密性能が低い住宅は、隙間風が室内に多く侵入するため、悪天候で強風の日は換気量が増え、風の弱い日は換気量が減る、あるいは特定の部屋の換気量は多いが別の部屋は少ないなど、換気が計画的にできない、ムラがでる住宅になってしまいますし、断熱性能低下にもつながります。室内の大半が暖かくても、隙間風で部分的に寒い場所があると、寒さを解消しようと暖房を焚きすぎたりもします。高断熱高気密は、暖かい家や省エネの実現、そして計画的な換気で効率良く室内の空気を新鮮にするためにも欠かせない大前提です。

江田建設が最近お引き渡しした住宅10棟の気密性能値(相当隙間面積・C値)は、平均で0.35cm2/m2でした。すべて気密測定を行っており、それが当社の自信でもあります。

主要な換気システムは全て機械換気

そもそも、どの住宅にも換気装置はついています。住宅会社によって採用する換気方式は異なります。

図表:換気方式

北海道立総合研究機構 北の住まいづくりパンフレットより引用

第3種換気は、比較的安価でもあり、多くの住宅会社が採用しています。室内の空気を屋外に出す「排気」を機械で強制的に行うことで、室内の空気圧が下がり、その結果給気口から自然に空気が入ってくるという仕組みです。シンプルな仕組みで手軽ですが、冬には各部屋の吸気口から屋外の冷気が冷たいまま入ってくるなどデメリットもあります。

給気が強制、排気が自然という、第3種換気とは逆の仕組みである第2種換気は、クリーンルームなどでは採用されますが住宅での採用例は少ないです。

一部の住宅会社が採用する第1種換気は、給気も排気も機械で強制的に行います。排気される空気が持っている熱を回収して、給気される空気を暖める「熱交換」を組み合わせて採用することができるため、給気口から不快な冷気が入ってくることを軽減し、省エネ性もあります。

ただし、フィルターの定期清掃が必要になり、それを怠ると換気量が減り、結露の原因にもなります。壁内のダクトも長くなりがちで、ダクト内の掃除は手間がかかるため、メンテナンス性という意味ではデメリットもあり、コストも第3種換気より高くなりますので第3種換気よりは採用が少ない状況です。

換気が機能しないと結露やカビ問題も...

この3つの換気方式ですが、いずれもメンテナンスフリーではありません。年に3回以上は掃除しないとフィルターが詰まったり、ダクト内が汚れて新鮮空気を供給しにくくなり、計画通りの換気回数は確保できなくなる恐れがあります。また、給気口から入ってくる外気が、冬になると寒くなるので、換気のスイッチを切ってしまい、換気ナシ、という状態になっている家も少なくありません。換気装置が計画通りの性能、機能を発揮しないということが少なくないのです。またいずれも電力で稼働する機械なので、停電時は動きません。

以前当社でも、過去に家を建てさせていただいたお客様から「窓に結露が発生した」というクレームを頂いたことがあります。慌てて訪問すると、換気装置の掃除がきちんとされていない、あるいは換気装置を停止してしまっているケースばかりでした。

年3回の換気掃除などそもそも無理?

住宅会社から換気装置を年に3回以上掃除しなければならないと言われても、換気フィルターやダクトの汚れは、家の中から直接見えるわけでもなく、室内の換気量不足は、なかなか気づかない面もあります。手の届きにくい場所に換気装置があることもあり、実際のところ多くの方が換気装置のお掃除をできていない状態になっています。

どう考えても、年3回の換気掃除をお客様に強いるのは困難であり、住宅会社としてそもそも無理なことをお客様にお願いしているのではないかという疑問を、実は多くの住宅会社が感じています。ですが、その点は目をつぶったり、責任をとらないということでスルーしている住宅会社が多いのではないかと思います。

当社は、この換気に関する問題を何とか解決したいと考えました。

パッシブ換気システムとの出会い

私がパッシブ換気システムに出会ったのは2005年です。当時私は、江田建設の建てる住宅の断熱気密性能を高め、気密測定で気密性能を検証でき、機械換気で換気量や空気の質が良くなっていることが、風量測定やVOC(揮発性有機化合物)濃度測定などで確認できるようになり、他社に比べ、基本性能、質の高い住宅を提供できているという自信を持てる体制にはなっていました。

しかし、機械換気はダクトも含めて掃除・メンテナンスが難しい、という悩みは解決できませんでした。

換気のお掃除の大切さをお客様にしっかり伝えるしかない、もし換気のスイッチを切ってしまったら、室内の水蒸気がたまり結露やカビが深刻になる、ということを伝え続けるしかない、そんな状態でした。そんな時に、北海道大学の繪内正道名誉教授が進めていた「パッシブ換気システム」に出会ったのです。

パッシブ換気システムは暖房に使われたエネルギーで換気を行うもので、地中埋設管を通し新鮮な外気を床下に取り入れ、床下に設置された暖房機で暖められた新鮮空気は家中をやわらかく暖房します。

家中くまなく循環した空気はVOCやハウスダストと共にやがて汚染空気として2階天井から屋外に排出されます。地中埋設管を通過する新鮮空気は冬は地中の熱で暖められ、夏は逆に冷やされると共に床下出口の温度センサーで流量制御され、室内排出口では湿度センサーで保湿制御されます。

このように自然エネルギーと暖房エネルギーを利用することで、省エネで安全なエコロジー住宅として皆様に信頼されております。

NPO法人パッシブシステム研究会ホームページには以下のように記されています。そしてパッシブ換気システムは

空気の温度差で自然に換気されるので壊れない
機械の騒音がない
電気に頼らない
ダクトの距離が極めて短くダクト内掃除がほとんど不要
どの部屋ももれなく換気できる
床下も暖かく乾燥状態を保てるので家の耐久性も高まる

こうしたパッシブ換気システムの理論・メリットに、私は大いに興味を持ちました。特に、私が重視したのは空気の入れ換えだけでなく、室内の水蒸気の排出を確実に行い続けてくれる仕組みであることです。結露・カビ対策上重要な点です。

写真:代表取締役 江田清三

パッシブ換気の効果を実際に測定させてもらいました

とはいえ、世の中には素敵な話がたくさんあります。本当に理論通りの結果が出ているのか、自分で検証してみなければパッシブ換気システムを導入し、お客様におすすめすることはできません。

そこでパッシブシステム研究会の当時の理事長・有限会社フォルムデザインの中野隆二代表取締役にお願いし、会に入会し、会員の建築した住宅で実際に換気風量などを詳しく測定させていただきました。現場で実際に測定することで、パッシブ換気システムは、実際に想定通り、住宅内の空気をもれなく換気する仕組みであることがわかりました。

お客様にも提案したところ好評で、1棟目の住宅で実装させていただきました。技術的に不安があった、屋外から床下に空気を引きこむための地中埋設管(アースチューブ)の内部の状態も徹底的に調べたところ風量は適切、結露も発生しませんでした。

地中熱で外気が暖められて床下に入る良さ

パッシブ換気の場合、外の空気は地中埋設管(アースチューブ)に入り、アースチューブ内を非常にゆっくりとしたスピードで移動します。その移動中に地中熱で加温されて床下に入りますので、暖房に必要なエネルギーを削減できます。この床下に入った空気を床下の暖房機であたため、1階の床などに設置してある換気用ガラリから暖かく新鮮な空気として室内に供給します。

図:パッシブ換気の空気の流れの比較(1)

左が室内に暖房機を設置して、機械換気を導入した場合、
右がパッシブ換気で床下に給気し、天井から排気する場合です。

この仕組みについてパッシブシステム研究会は以下のように説明します。

図:パッシブ換気の空気の流れの比較(2)

従来工法の機械換気システムでは必ずといって良いほど空気の通り道が出来てしまいます。この換気システムではデッドゾーンが発生してしまい、そのデッドゾーンに湿気などが溜まったりしてよどみを発生させてしまいます。
これを補うのがパッシブシステムの自然換気システムであり、空気の流れは従来の横の流れから縦の流れに変化します。これは床からの熱を持って換気させるためであり、前述のデッドゾーンを回避させ、よどみを発生させない換気システムとなるのです。これが自然換気システムの大きな特徴のひとつとなっております。

江田建設ではこれまで30棟以上の住宅でパッシブ換気システムを導入させていただきました。当社の標準的な換気システムであり、経験も技術も確立できているので、コストアップにもなりませんのでお客様の経済的負担も増えません。

現在はパッシブ換気システムと、一部第3種換気を併用して、どの季節でも安定した換気が確保できるようにハイブリッド型換気システムをご提案させていただいております。

また、お客様と換気について打合せをさせていただいた上で、お客様の選択で第3種や第1種の換気システムなど他の仕組みを採用させていただく場合もあります。

家づくりを検討される方でも、換気システムの選定までは関心を持たれない方もいらっしゃると思います。江田建設は住宅の基本性能に関わる部分は、このようにパッシブ換気システムに限らず、一つひとつ徹底して検証する住宅会社ですし、興味をお持ちのお客様には丁寧に説明させていただきます。注文住宅は間取りやご予算、デザイン、キッチンや建材選びなど決めなければならないことも多々ありますので、換気については江田建設に任せる、と言って頂くことも多々あります。必要に応じて柔軟に打合せをさせていただきますので遠慮無くご相談ください。

→パッシブ換気システムを導入されたお客様のインタビュー:
結露・寒さは高断熱&パッシブ換気で解決/小樽・N邸

図:省エネ・ハイブリッド型換気システム

※この図に書かれている断熱仕様はQ1仕様です。一方、江田建設は、それを上廻る仕様、外壁が高性能ロックウール105ミリ + ウレタンボード80ミリ=合計185ミリ=18.5センチの断熱材を施工しています。外皮平均熱貫流率(UA値)は約0.3W/m2Kになります。